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多文化共生社会に向けて

明治大学商学部教授 山脇 啓造 氏

第12回2008.03.26

人権型と国際型

外国人の居住地域は関東、東海、関西各地方に集中しています。東京都や愛知県では、総人口に占める外国人登録者の割合が3%近くに増えていますし、市町村レベルでは、群馬県大泉町や岐阜県美濃加茂市、東京都新宿区など、10%を超えるところもあります。一方、外国人の割合が1%未満の市町村も、東北、九州地方を中心に多数あります。また、国籍別に外国人登録者の居住地域を見てみると、韓国・朝鮮人は関西地方に多く、ブラジル人は東海地方に多いなど、外国人の居住状況には、極めて地域差が大きいことがわかります。

このような地域差を反映して、全国の自治体の外国人住民施策にも大きなちがいが見られます。一般的には、外国人住民の多い地域において、施策が進んできたと言うことができるでしょう。外国人施策に積極的に取り組んできた自治体は、1970年代以来、在日コリアンを対象とした施策に主に人権の観点から取り組んできた自治体(人権型)と、1990年代以降、ニューカマーを対象とした施策に主に国際化の観点から取り組んできた自治体(国際型)に大きく分かれます。いずれも、今日では、単なる外国人住民を対象とする施策から、外国人の地域社会への参加を促し、日本人住民にも働きかけて、多文化共生をめざしたまちづくりへと施策の幅が広がりつつあります。また、庁内に外国人住民施策の担当部署を設置し、施策の基本指針や計画を定め、総合的な取り組みを推進しています。そうした自治体の代表例として、大阪市(人権型)と浜松市(国際型)を挙げることができます。

大阪市の外国人登録者数は12万1415人で、総人口の約4.6%を占めています(2006年12月現在)。大阪市は戦前から全国一の朝鮮半島出身者の多住地域であり、韓国・朝鮮人の外国人登録者全体に占める割合は7割を超えています。大阪市は1994年に外国籍住民施策有識者会議を設置し、1998年に「外国籍住民施策基本指針」を策定し、外国籍住民の人権の尊重、多文化共生社会の実現、地域社会への参加という3つの目標を掲げました(2004年改定)。なお、大阪市の外国人施策を所管しているのは市民局人権室推進担当で、外国籍住民施策担当課長を配置しています。

浜松市の外国人登録者数は3万3272人で、総人口の約4%を占めています(2006年12月現在)。浜松市は在住ブラジル人が全国一多く、外国人登録者全体の6割近くを占めています。2001年に「世界都市化ビジョン」を策定し、「共生」を「国際交流・協力」と並ぶ施策の柱に位置付けました。また、都市間連携を重視し、他の自治体に呼び掛けて2001年に外国人集住都市会議を設立しました。同会議は外国人受け入れ体制の整備を国に求める「浜松宣言」をまとめて以来、積極的な政策提言活動を続けています。世界都市化ビジョンは2008年に改訂されました。新ビジョンでは、国際交流センターを多文化共生センターへ改組するなど、「だれもが住みやすい共生社会づくり」を目指しています。なお、浜松市の外国人施策を所管しているのは、企画部国際課です。