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多文化共生社会に向けて

明治大学商学部教授 山脇 啓造 氏

第10回2008.01.23

2007年の多文化共生10大ニュース

2007年の多文化共生関連10大ニュースを選び、月別に並べてみました。


<3月>
*総務省の「多文化共生の推進に関する研究会」が報告書を公表

2006年3月の報告書に続いて、2度目の報告書となります。前回が多文化共生の総論とすれば、今回は各論として防災、情報提供、外国人登録の課題に焦点が絞られました。なお、2007年度は研究会が設置されませんでした。


<4月>
*経団連が「外国人材受入問題に関する第二次提言」を公表

外国人政策に関する経団連の提言は、2004年4月以来です。今回の提言では、国や自治体への要望だけでなく、企業の役割にも言及しました。外国人材の円滑な受入実現に向け、内閣府に担当大臣を置き、関係省庁が一体となって取り組む体制の整備を提言しています。


*ヤマハ発動機IMカンパニーが外国人従業員のための日本語教室を開始

浜松にある同社は産業用ロボットなどを製造する会社で、浜松国際交流協会と連携して始めました。同協会では「地域日本語連携推進協議会」を立ち上げ、企業と地域が連携して日本語教育を推進する方策を検討しています。このような試みは全国初と思われます。


*三井物産が在日ブラジル人児童向け補助教材を開発し、インターネット上に公開

同社は2005年に在日ブラジル人子弟教育支援活動を始め、ブラジル人学校の支援、ブラジル人支援NPOの援助、ブラジル人児童向け補助教材制作を進めています。同社がCSR(企業の社会的責任)基本方針を策定したのは2004年ですが、多文化共生分野の先駆的取り組みといえます。


<5月>
*研修・技能実習制度について、経済産業省、厚生労働省と長勢法務大臣(当時)が立て続けに改革案を発表

9月には経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会が改革案をまとめ、経団連も提言を発表しました。12月には規制改革会議が第2次答申で改革案を提示しています。 2009年の通常国会には、関係法案が提出されることになっています。


<7月>
*宮城県が「多文化共生社会の推進に関する条例」を策定

2005年以来、多文化共生を推進する指針や計画を策定する自治体が増えていますが、条例を策定したのは宮城県が初めてです。宮城県では、条例に基づき、「多文化共生社会推進審議会」が設置され、現在、基本計画策定の準備が進んでいます。


*文部科学省が外国人児童生徒の教育に関する検討会を、文化庁が国語審議会に日本語教育小委員会を設置

首都圏教育長協議会が「外国人の子供に対する教育の充実に関する要望書」(10月)を、外国人集住都市会議が外国人児童生徒の受け入れについて緊急提言(11月)を文科省に提出しています。


<11月>
*参議院の少子高齢化・共生社会に関する調査会が「外国人との共生」について審議

少子高齢化・共生社会に関する調査会が11月に2回開催され、与野党の議員から「外国人との共生」に関して多くの質問が出され、関係省庁の副大臣が答弁しました。国会で多文化共生関連の質問がこれだけ集中したのは初めてのことです。


*岐阜県美濃加茂市で外国人集住都市会議みのかも2007開催

当日は、全国から600人を超える聴衆が集まりました。同会議は「みのかも2007メッセージ」の中で外国人住民基本台帳制度の創設を訴え、外国人児童生徒教育に関する緊急提言も発表しました。


*外国人住民台帳制度の創設に向けた検討が具体化

同制度の創設は規制改革・民間開放推進会議の第3次答申(2006年12月)に盛り込まれていましたが、総務省と法務省の間での協議が進みませんでした。ようやく11月に工程表がつくられ、12月の参議院決算委員会において増田総務大臣が法案提出を明言しました。