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第08回2015.11.25

外国人の永住を前提とした自治体施策の推進

NPO法人多文化共生マネージャー全国協議会では、今年度、日本財団の助成を得て、全国14カ所で「多文化共生推進ワークショップ」を開催しています。多文化共生という言葉が広く使われるようになるきっかけとなった阪神・淡路大震災から20年、総務省が「多文化共生推進プラン」を策定して来年で10年になる節目の年に、地域でのさまざまな活動を共有し、できたこと・できなかったことをふりかえるとともに、次の10年、20年に求められる方向性や取り組みについて考える機会としています。

この20年の間に、日本で暮らす外国人の様子は大きく変化しました。1995年末の外国人登録者数は約136万人。そのうち永住者資格を持つ人1 は約7万人でした。2014年末の在留外国人数は約212万人で、約68万人が永住者資格を持っています。日本は移民を認めていない国ですが、10年以上、継続して日本に滞在しているなど、一定の要件を満たせば永住者資格を申請することができます。2000年代に入ってから毎年3万人以上のペースで増えています。

ワークショップでも、日本で暮らして20年以上になる外国人住民や、日本生まれ・日本育ちで外国にルーツを持つ人たちが登壇し、それぞれの地域での暮らしや今直面している課題について、たくさんの声を聞かせてもらいました。永住するということは、日本で家を買ったり、資産を形成したりしますし、高齢者になって介護が必要になることもあります。日本の多くの金融機関は、永住者資格を持つ外国人にも住宅ローンを認めていますし、日系ブラジル人世帯の約8割が自動車を保有しているという調査2 もあります。「最近、墓を買った」「遺産相続の制度がわからない」「孫のアイデンティティについて悩む」といった声も聞かれました。

2012年に外国人登録法が廃止され、外国人も住民基本台帳法に基づいて住民登録をすることとなりました。外国人登録は「在留外国人の公正な管理」を目的に法務省が行うもので、自治体はその事務を委託されていたに過ぎません。一方、住民基本台帳は「住民の利便の増進」を目的に、基礎自治体が本来業務として行うものです。自治体は永住傾向にある外国人住民がいる世帯について情報を把握し、利便の増進の観点から必要な施策を講じる必要があります。これまでの外国人登録は「個票」でしたが、住民登録は世帯単位ですので、例えば日本国籍の子どもであっても母親が外国籍の場合、乳幼児検診や入学の案内は多言語で提供すべきでしょうし、来年、40歳になる外国人がいる世帯に対して介護保険制度を多言語で説明する必要もあるでしょう。

永住者資格を持つ外国人住民の増加は、本格的な人口減少社会に突入した日本において、ほぼ唯一と言って良い朗報です。2015年3月現在で、多文化共生推進プランを策定済みと回答した自治体は、まだ全体の36%です。自治体が必要な施策を多言語・多文化で丁寧に対応していくことは、これからの地域の浮沈に関わる重要な課題と認識し、体系的、計画的な多文化共生施策の推進を急いで欲しいところです。

  1. 特別永住者を除く。
  2. 坂幸夫『富山県居住外国人労働者の家計水準・消費行動と県経済への波及効果』(2010.3 富山大学紀要)