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第23回2009.02.25

外国人学校

昨年秋以来の急速な景気悪化で、製造業で働いてきた派遣・請負労働者の失業問題に大きな関心が集まっています。その中にはブラジル人等外国人も含まれ、特にその子どもたちの教育環境の悪化が懸念されています。国内に90校ほどある南米系学校で生徒が激減しているようです。

内閣府に定住外国人施策推進室を設置した麻生首相は、1月28日の国会における施政方針演説で、「日本に定住する外国人やその子どもが、増加しつつあります。新たに設けた担当組織の下、地域における支援を進めます。」と述べました。首相の施政方針演説で外国人に言及があったのは、初めてのことではないでしょうか。

その2日後の1月30日に、文部科学省は「定住外国人の子どもに対する緊急支援-定住外国人子ども緊急支援プラン」を発表しました。その内容は今年度と新年度の対応に別れ、今年度は、公立学校に転入する者に対する支援、子どもたちの居場所づくり、子どもたちに対する就学支援、自治体や企業等によるブラジル人等の子どもに対する教育支援の推進からなります。新年度以降については、教員定数の加配措置と非常勤講師等の配置の支援を行い、省内に設置されたプロジェクトチームと、国際教育交流政策懇談会に設置した「ブラジル人学校等の教育に関するワーキング・グループ」(WG)においてさらに検討するとしています。

新聞報道によると、WGは南米系学校や自治体の関係者等13人の委員からなり、7月までに8回開き、前半4回は委員が各地の状況を報告、後半4回で論点を整理し、報告書にまとめる予定です。2月5日に初会合が開かれ、南米系学校の深刻な状況が報告されました。

外国人学校にかかわる課題は、多文化共生社会の形成にとって避けて通ることのできない重要な課題といえます。特に、外国人学校の法的位置づけの問題は、1970年前後に国会に重ねて提出された外国人学校法案が不成立に終わって以来、日本政府が先送りにしてきたといえます。その結果、朝鮮学校や中華学校など長い歴史のある学校ですら、各種学校扱いとなっています。各種学校とは「学校教育に類する教育を行うもの」であり、料理学校や自動車学校などと外国人学校を同列に扱うことに無理があるといえます。最近、幾つかの南米系学校が各種学校になっていますが、大半の外国人学校は無認可校となっています。

外国人学校の問題を考える時には、公立学校における外国人の受け入れとあわせて、外国人の教育を受ける権利をどう保障するかを総合的に考えなければなりません。国として、外国人の教育をどのように推進していくのか、中長期的な観点に立ったビジョンと方針を策定することが求められています。文部科学省では、外国人学校は大臣官房国際課が所管し、公立学校は初等中等教育局国際教育課が所管していますが、こうした縦割りの体制をまず改めなければならないでしょう。

外国人学校については、一定の要件を満たした学校は正規の学校と位置づける新たな法律を制定し、日本の学校と同等な卒業資格を認め、日本の私立学校と同等な助成金を交付すべきでしょう。そして、子どもの教育を受ける権利を保障するために、外国人にも日本人同様に子どもを就学させる義務を課すことが望まれます。