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第92回2012.11.28

インタビュー:秦野市政策部公共施設再配置推進課 志村 高史 さん(下)

 庁内の各部署が管理する公共施設のすべてについて、土地、建物の面積、設置年、根拠法、耐震補強の有無、年間経費、稼働率などを調査して、市の保有するすべての公共施設に関する白書を作成した秦野市の志村さん。財政力から考えて、将来残せる施設がそれほど多くないことを知り愕然としたという。
 それを公表するにあたり、庁内各部署からの抵抗も強く、サンドバックになることを覚悟した。
 次に、その白書をもとに、公共施設の再配置について取り組むことになる。


画像:志村高史氏
志村高史氏

志村   秦野市の目標は、白書を作ることではなかったんです。当時の組織の名前も、公共施設再配置計画担当だったんです。計画を作ることが目標の組織だったんです。白書を作ってそこで止まってしまった自治体もあります。でも、秦野市の場合は、計画をつくることが目標でしたから、当然のように白書が終わったら次だということで、ステップを進めていきました。ここは間髪入れずにやっていかないと、間が空くと、白書でせっかく市民の皆さんに危機感を訴えたのに、庁内もそうですが、それがどんどん薄れていってしまうんです。ですから、鉄は熱いうちに打て、ではないですが、間髪入れずに次のステップへ進んでいきました。当時は、どんな方針になるのかということが明確に頭の中にイメージできていない状態でしたが、おかげさまで外部の先生に集まっていただいた検討委員会の中で、非常にいい議論をしていただき、こうしていろんなところから注目を浴びるようなすばらしいものが出来上がったのかなと思います。
 とにかく、大事なのは、作ることよりもそれを世間に出す勇気ですね。一担当者がいくら「そうしなきゃだめだ」と言っても、それを認める上司、あるいは組織のトップがいなければ、実現しないわけです。当時の部長あるいは市長、今の市長と同じですが、勇気をもってこれを公表していく、こういう方針を作っていくんだ、という英断されたことには非常に感謝しています。

稲継   方針の具体的な中身について、教えていただけますか。

志村   はっきりと、もう新しい箱物は作らないということを、真っ先に掲げています。これは、学校も建て直さないとかそういう意味ではないんです。必要なものはきちんと、建て直していく。要は、新しい何とかセンターとか、何とか館とか、そういうものはもう造らないという意味です。
 なぜ、そう言うのか。今あるものは、もう持ちきれないという計算の結果が出ているんです。今あるものを持ちきれないのに、なぜ新しい物を造ることができるのかということです。ですから、もし社会、経済情勢の変化、あるいは法律の変更、そういったものによってどうしても作らないといけないものができた場合は、まず更新する予定だったものを取りやめていく。そこまで言っているんです。
 方針の2番目として、しっかりとした優先順位を付ける。結局、それをやらないと今までと同じになってしまうんです。公共施設はどれも大事だから作ったはずで、大事なのはもうみんなわかりきっているんです。ですから、みんなの意見を聞いて、みんなを優先していると、結局今までと同じになってしまって減らすことができない。だから、非常に厳しい優先順位を付けていくということです。
 その優先順位に従って、数値目標を立てています。40年先に向けて31%の公共施設を減らしていけば、秦野市は大事な公共施設を子や孫の世代まできちんと引き継いでいけるという計算結果を示しています。この部分が、ほかの自治体と比べて秦野市が非常に珍しいと言われているところで、そこでいろいろと注目を浴びているのかなと思います。また、こういったことを、今までのように縦割りでばらばら考えない。一元的に組織としてマネージメントしていく。法律の枠、あるいは国の省庁の枠、そういうものにとらわれない中で考えていく。それが4つの基本方針です。

稲継   この4つの基本方針を策定され、それを公表されました。何か、反響のようなものはありますか?

志村   「新しい箱物は造りません」というのは非常に衝撃的だったようで、マスコミなんかでもそこのところをまず第一の見出しにしてしまうんです。「新しい箱物は造りません、秦野市箱物3割削減」という見だしを付けられると、市民の皆さんはびっくりしてしまうわけです。なに、学校を建て直さないのかとか、2年後とか3年後に3割もの建物が減ってしまうのかとか。ですから、そういう取り上げられ方をされたのは不本意ではありましたけど、3割減らすといっても40年かけます。ゆっくりゆっくり進めていくんです。それができるのは秦野市が、事態が深刻になる前からこういう計画を作って取り組むからこそできるんです、ということを市民の皆さんに説明し、理解をいただいています。

稲継   40年ぐらいかけて30%削減ということですが、生産年齢人口から言うと、40年前と今と比べるとかなり減っている。その40年前に合わせるような形にするという趣旨なんですかね。

志村   そうですね。大体平成46年、今から23年後には秦野市の生産年齢人口は昭和60年ぐらいと同じになるんです。ですから、今、先生がおっしゃったように、ちょうど将来に進むんだけど、過去に戻っていく感じになるかと思います。過去を振り返ってみると、秦野市は一体全体どれだけの箱物があったんだろうと。庁舎と学校はあったけど、公民館とか、何とかセンターとか、そんなにあっただろうか。振り返ってみますと、終着地点の想像ができるのではないかと思います。

稲継   こういった再配置、特に新聞の見だしがセンセーショナルだっただけに、市民から見るとやや厳しいように映るかもしれませんが、そういった中でもいくつかのシンボル事業のようなものがあるとお聞きしたんですが、どのようなものでしょうか?

志村   どうしても市民サービスが低下するのではないか、生活が不便になるんじゃないか、そういうマイナスイメージが先行しがちなんです。ですから、シンボル事業を定めてまして、公共施設の再配置というのは一概に市民サービスの低下を招くばかりではないんですと。安い税の負担で、より高いサービスを実現すること、これからそういうことを考えてそれを実現していくことも公共施設再配置の考え方なんですよと。それを目に見える形で市民の皆さんにお示ししたいというのがシンボル事業です。ですから、前期実行プランの5年間、スタートの5年間で重点的に取り組んでそれを見せていくということでやっています。

稲継   具体的にはどのようなことでしょうか?

志村   1つ目は、「義務教育施設と地域施設の複合化」です。先ほども言ったように、単独で公民館のまま存在していると非常に非効率な部分もある。学校と複合化した施設にすることで、お互いに部屋を兼用したりして効率的な利用をする。そのことによって床面積を減らしながらも機能を維持していける。それが実現できるということです。この事業に関しては、最大限に民間の知恵と力をお借りしたいと考えています。
 2つ目として、「公共的機関のネットワーク活用」です。具体的には保健福祉センターという福祉目的の施設があるんですが、非常に豪華な造りになっていまして、1階のロビーとか広々としていますので、そこへ郵便局を誘致いたします。ただ、郵便局に来てもらうだけではなくて、住民票や印鑑証明証なんかの交付業務を委託します。公務員以外でその仕事をやっていいと認められているのは、郵便局員だけなんです。ちょうど場所的にも、本庁舎とか連絡所からは少し離れたところにありますので、高齢化社会を迎えるにあたって、そういうサービスを受けられる場所ができるだけ身近にあったほうがいい。郵便局というのは、どこの自治体に行っても役所と同じようにその区域内にネットワークが完成していると思うんです。ですから、そういうネットワークを利用していこうと考えました。また、貸すことによって賃貸料収入が入ってまいりますので、保健福祉センターは年間9,000万円もの維持費がかかる施設です。福祉目的の施設ですからあまり収入を得るような利用は全面的にできませんので、賃貸料収入を得て、維持費の一部に充てていこうということです。
 3つ目としては、「小規模地域施設の移譲と開放」です。児童館ですとか老人いこいの家という非常に小さな、利用者の範囲も限られているような施設があります。今までは、公設公営で人を張り付けて運営しているわけなんですが、地域に自由に運営をお任せしようと考えています。例えば、児童館は児童福祉法の縛りがあったりして、子どもが中心でなければいけないとかいろいろと制約があるんですが、それを地域にお渡しすることによって地域独自の運営をしていただくことができないだろうか。うちの地域は高齢者が多いので、高齢者のためのサービスをやっていきたい。あるいは、子育ても大切にしたいので、そういうことにも使っていきたい。これからは、地域の自主性にお任せして運営してもらうということです。それと共に、地域は自治会館を持っています。公共施設の床面積が減っていくと、今まで借りられた部屋がなくなることもあります。そういう場合でも、実はもっと身近な場所に空いている建物があったりするわけです。それが自治会館です。大体、寄り合いやお祭りの時はフル回転しますが、そうでないときは閑散としているところが多いはずなんです。しかも、ちょっとしたサークル活動ぐらいなら十分にできる大きさがあるんです。それだったら、サークル活動なんかに積極的に開放してもらうように転換していきたい。それを支援していきたいということです。
 4つ目のシンボル事業は「公民連携によるサービス充実」です。平たく言うと、民営化なんかはそれに当たると思います。これに関しては、知的障害者の福祉施設が社会福祉法人に事業を移行するということで、今年の4月に計画がスタートして1年で完成しています。それ以外にも、公立幼稚園の民営化とかいろいろありますが、教育委員会が今、一生懸命議論していますので、その様子を見守っている状況です。

画像:ファミリーマート秦野市役所店
ファミリーマート秦野市役所店

稲継   公民連携ということで言うと、市役所の敷地の中にコンビニの建物が建っているとお伺いしたんですが、これは?

志村   その仕事も担当させていただいたんですが、これは市長の発案なんです。私どもの市長は商人でしてプロパンガス屋のおやじなんですが、「もったいない」という発想をよく持つんです。かつては市役所の並びに警察署も建っていまして、ろくに駐車場がなかったので、警察署の利用者は、みんな市役所に停めて駐車場は大混雑していたんです。その警察署が移転したら、駐車場がすき始めたんです。それを見た市長が、「もったいないと思わないか。」と言うんです。我々は、「利用者がいつ来ても、すぐに停められて、苦情もなくていいじゃないか」ぐらいにしか思わなかったんですけど、「それがお役人の発想だ」とよく怒られましたけど、市長の「せっかくこんないい土地に余裕が生まれたんだから、コンビニでもやったら儲かるんじゃないか」という発想で、取り組みを始めたんです。市役所の敷地の中に独立した店舗が建っているというのは、日本で1つだけだと思います。

稲継   建設費は役所が持ったんですか?

志村   いえ、事業用定期借地で土地を貸す方法をとっていますので、税金は一切使っていません。すべて工事費は相手の負担で、賃貸料収入を得ているんです。その賃貸料収入もどこかに行ってしまうのではなくて、この市役所の建物は築40年以上たっています。非常に維持補修にお金がかかる時期に来ています。お気づきになったかどうかわかりませんが、トイレなんて今は非常にきれいになっているんです。市長は玄関とトイレはきれいにしておけという方で、そういう家に育ったためか(笑)、非常に気にされていました。ただ、トイレ改修工事をやるのに、今まではお金がない。直接的に市民のために使うほうが優先だろうという判断だったんですが、コンビニに貸すだけで年間1,000万円以上の賃貸料収入がありますので、それを充てて市役所の維持補修をやっているという状況です。

稲継   なるほど。私もいろんな市役所とか国の役所を回りますが、建物の中を貸してコンビニが入っているというのは結構増えてきました......。例えば、総務省や財務省の建物の中にもコンビニが入っています。ただ、役所の敷地内に独立したコンビニの建物があるというのは見たことがなくて、ちょっと驚きました。

志村   中に入れてしまうと、せっかくのコンビニの24時間365日営業を担保してあげられなくなっちゃうんです。コンビニを儲けさせてあげるためだけに、それを担保してあげたかったのではなくて、中でいろんな公的サービスをやっています。例えば、図書館の図書の返却ができます。

画像:コンビニ内の図書返却口
コンビニ内の図書返却口

稲継   図書の返却ができる?

志村   はい。そうしますと、24時間365日いつでも返却できます。住民票の受け取りサービスもやっています。ですから、夜中に来ようと、明け方に来ようと受け取ることができる。あるいは、秦野のお土産なんかも売っています。急に出かけなければいかなくなったときにも、夜中であろうと朝であろうと、ここへ来れば手土産が買える。あるいは、公共施設白書や再配置の計画書も売ってもらっているんです。今、いろんなところから注目を浴びて白書と計画書が隠れたベストセラーになっているんですが(笑)、夜中に買う人がいるかどうかは別として、市の刊行物なんかもいつでも手に入れることができるんです。

画像:コンビニ内の住民票保管ロッカー
コンビニ内の住民票保管ロッカー

稲継   ああ、コンビニで。

志村   はい。そういうメリットが生まれるので、外へ建てることに非常にこだわったんですね。

稲継   やはり役所の中だと、役所の営業時間に拘束されてしまいますもんね。

志村   そうですね。

稲継   365日24時間空いているコンビニ、しかも市役所の敷地の中にある。これは非常にいい例というか、特異な例ですよね。

志村   今までの役所のやり方ですと、例えば白書を作りましたので、市民の皆さんにも大いに見てもらいたいとなると、まずホームページで公開はしますが、さらにこれが欲しいと言われたときにどうするのか?「月曜から金曜の8時半から5時までの間に担当課に買いに来てください」と答えていたでしょう。それが本当に市民に対する「皆さん、ぜひ見てください」という姿勢なのでしょうか?ところが、本市ではもうコンビニができましたので、「ホームページでもご覧いただけますし、印刷した物が必要でしたらコンビニでいつでも販売しています」ということができるようになったわけです。これも、そんなにうまくいく訳がないとか、最初のうちは、庁内で散々叩かれました。でも、いざふたを開けてみれば大成功です。市長の発想は公務員の発想の外へ行っているんです。

稲継   そうですね。

志村   ですから、公務員の頭で考えると、市役所にコンビニなんか作るのか、そんなものうまくいく訳ないと、ある意味で袋だたきみたいな状態でしたが、そんなことはない、これは絶対にうまくいく、ということで市長に「絶対大丈夫です。これはうまくいきます」とどんどん進めてきました。
 公務員の頭の中だけで考えないことが成功の秘訣だと思うんです。相手の話をよく聞く、それも特定の人だけではなくて、コンビニでしたらチェーンがいくつもありますから、それらの全部の担当者の話をよく聞く。そうすると、我々は行政のプロですから、法律の制約はどうだろう、公的サービスをやってもらうことは可能だろうか、そういうことが頭の中でうまくミックスできるんです。そうなってくると、これはうまくいくという確信に変わっていくんですね。これを自分の頭の中だけで考えて、それができたかというと、おそらくできなかったでしょうね。

稲継   私なんかが大昔に学んだ行政法の概念からすると、公共用物とか公物だとか、その辺の賃貸とか。事例としては、役所の中に散髪屋を入れていいのかどうかとか、そういうレベルの議論は大昔にしていたんですが、今は全然違う発想になっていると。

志村   そうですね。

稲継   全然違う発想だけど、むしろ市民サービスから言うと、土曜日も、日曜日も、夜中でも、早朝でも空いていて、しかも市役所のサービスに類似した図書の返却だとか、住民票の受け取りだとか、あるいは白書の購入などができるということで、住民にとっては本当に願ったり叶ったりのサービスになっていると思いますね。

志村   そうですね。ファミリーマート側もけっこう儲かっているみたいですよ。

稲継   ああ、そうですか(笑)。

志村   来店者数の報告を毎月受けていますが、チェーン平均の3割増ぐらいの数字をずっと出しているんです。累計の日平均客数は、平成19年12月がオープンですから、4年半経っていますが、毎月まだ伸び続けています。

稲継   ああ、そうですか。

志村   普通でしたら、何年かで落ちるからてこ入れを図るんでしょうが、ずっと伸び続けているんです。こんなことが起こるんだなとびっくりしています。

稲継   市役所という場所のメリットというか、みんなが集まる場所でもあるし。

志村   そうですね。

稲継   そこにコンビニがあって、市役所に行ったらたまたま閉まっているけど、コンビニで図書も返せるんだとかいろんな付帯サービスがあるのは、市民にとってもいいのかなと思いますね。

志村   そうですね。

稲継   市役所にとっても毎年1,000万円以上の賃料が入る。空き駐車場だったらほとんどお金にはならなかったのに、それを稼ぐということでは非常にいいコラボができている、公民連携ができている例ですよね。

志村   そうですね。市長もそういうのを、「俺の発想だ」と威張ればいいと思うんですが、言わないんですよ。

稲継   おっしゃらないんですか?

志村   「成功したらおまえたちの手柄だ。失敗したら俺の責任だ」と、随分太っ腹なことをおっしゃるなと思うんだけど。もっと、「俺の発想だ」と言ったほうがいいと思うんです。そうすれば、市民の間からも、公務員だけが物事を考えるな、という声がもっと上がってくると思うんです。いまだに、これは福祉施設なんだからとか、そういう発想の職員が多いのも事実です。ですから、外からの力で圧力をかけてもらわないと、なかなか組織全体が変わっていくことは難しいのかなという気がします。

稲継   でも、市長が圧力をかけるだけでは動かなくて、志村さんのような職員がいらして、それをしっかりと受け止めて形にしていくことが非常に重要なことかなと思いますね。

志村   そうですね。実は、郵便局の誘致も市長の発想なんです。

稲継   ああ、そうですか。

志村   ここへ呼べば、誰にも使いやすい郵便局ができるぞと。住民票、印鑑証明をやってくれる。これはもう絶対にやるべきだということで、郵便局株式会社の方にトップセールスをかけたんですね。自ら行かれまして、向こうの店舗開発部長かなにかと直接話をして決めてきちゃったんです。それはもうやらざるを得ないですよね。

稲継   (笑)。

志村   その後に、東日本大震災が起きたんです。秦野市のシンボル事業を参考にして、いいな、うちも同じことをやろうと申し込む自治体は多いらしいんですが、今、みんな断られてしまっているそうです。

稲継   そうなんですか。

志村   津波で郵便局をたくさん失ってしまい、日本郵便株式会社としてはそちらの復興が最優先課題なので、他の新規開発みたいな予算は振り分けられませんという状態なんだそうです。そういう中でも秦野市のケースだけは、もうすぐ10月29日にオープンしますが、歩みを止めることなく進めてこられたというのは、やはりトップセールスのおかげなんだろうという気がします。ですから、市長はもっと胸を張って「これは俺の発想だ」と言ってくれればいいんですけど、言わないんです。

稲継   ずっと公共施設白書にまつわるさまざまな話をお伺いしてまいりました。最後に、志村さんからこのメルマガをお読みの皆さんに何か一言メッセージをいただけたらと思います。

志村   公共施設更新問題というのは、全国の自治体で必ず起こります。都市部の人口の多いところでも、地方の合併した人口密度の低いところでも、みんな必ず起きるんです。でも、この問題に取り組もうとするのには、非常に勇気が必要だと思います。住民の方の反対があったり、あるいは議会の方の反対もあったり、選挙のある市長は腰が引けてしまって、自分の任期の間、何とかなればいいや、って思われるような場合もあると思うんですね。
 ですが、結論を先送りすることは、将来の市民、私たちの子どもや孫の世代に対してどれだけ無責任なことか、どれだけ大きな負担を押しつけることになるか。そのことに早く大勢の方に気づいていただかなければいけないんです。市の職員もそうです、議会もそうですし、住民の皆さんもそうです。秦野市の取り組みを知っていただいて、重要な問題になるべく多くの方が気づき、公共施設更新問題に対する取り組みを進めていただけければと思っています。また、そのために私が一地方公務員の立場でできること、逆に地方公務員でなければできないこともあると思います。そういったことをどんどんやっていこうと思っていますので、お困りの自治体の皆さんがいらっしゃれば、いつでも遠慮なくお問い合わせをいただければと思います。

画像:秦野市役所前を流れる水無川
秦野市役所前を流れる水無川

稲継   はい。今日は秦野市の志村さんにお話をお伺いしました。どうもありがとうございました。

志村   ありがとうございました。


 高度成長期、バブル期に箱物をつくりつづけた自治体においては、今後、それらの施設の見直しに着手せざるを得ない。秦野市の、将来を見据えた公共施設の再配置の取り組みには、全国の自治体が注目しており、視察もひっきりなしである。志村さんいわく「いつでも遠慮なくお問い合わせください」とのことである。ベストプラクティスを独占しない住民のための連携姿勢が強くみられるところが頼もしい。